2021/8/30 8:05

同じベルトが6本!? 新人レスラーが三冠王座の1つを獲得!? オスプレイが自作IWGP世界ベルトで挑発!偽ベルト問題を斬る!

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オスプレイが“偽”IWGP世界ヘビー級ベルトの防衛戦へ!


 北関東在住の、とあるプロレスラーのご自宅に伺った時のことだ。仕事の打ち合わせだったが、選手から出て来た一言に衝撃を受けた。「ああ、初代のインターヘビーのベルトなら、別の部屋にあるよ」「アジア・ヘビーのベルトも」「トロフィーも……」etc。発言の主は百田光雄。そう、力道山の息子である。よって、力道山時代の栄光の品々もそのご自宅にあるわけだ。だから別に不思議もないのだが、筆者はどうにも、興奮が隠し切れなかった。わけても、「由緒あるチャンピオンベルトが普通に自宅にあるって、どんな気持ちなんだろう?」と、ファン気質抜けきらぬ心持ちだったのを覚えている。

 今年出来たばかりのIWGP世界ヘビー級のベルトが、早くも揉めている。5月に負傷により同ベルトを返上した、2代目王者のウィル・オスプレイが、8月14日の新日本プロレス・ロサンゼルス大会で復帰を宣言。その際、自作と見られるIWGP世界王座のベルトを持参し、自身が今も王者であると主張。果たして、8月26日には新日本プロレスから、そのオスプレイの復帰戦が発表(9月25日、テキサス州ダラス、カーティス・カルウェル・センター)。新日本のLA道場生のカール・フレドリックスを相手にすることとなったが、この一戦について、オスプレイが、自身のTwitterでこう呟いているのだ。

『My 1st defence of the REAL IWGP World Heavyweight Championship in Dallas.Fredricks vs Ospreay !』(ダラスで俺の、リアルIWGP世界ヘビー級王座の初防衛戦だ!※拙訳。以下同)

 何ともかまびすしい限りだが、ご存じのように、現在の同選手権者は鷹木信悟(3代目)。したがってオスプレイが携えているベルトも、勿論偽物なわけで、何をか言わんやなのだが、実はこの、同一のベルトなのに、複数が存在するというドラマ(トラブル?)も、プロレス界ならでは。その歴史を彩り、裏面を色濃いそれにして来た。

 今回の当欄は、この“複数ベルト問題”を辿り、IWGP世界ヘビー級王座の展望も探りたい。

同じベルトが6本!


 のっけから内情を明かすが、特に1970年から80年代に、全く同じベルトが2本以上存在することは、ごく普通であった。ベルトを作るには、先ず鋳型を制作しなければいけないのだが、それに非常に金がかかる。なので、鋳型自体はそのまま活かし、あとから取り付けるプレートや帯の部分を変えることで、違うベルトにするという打ち出しが、日常茶飯事だったのだ。もちろん、ずぼら宜しく、そう言った手心を一切加えない場合も多い。往年の名レスラー、ビル・ロビンソンが持っていた大英帝国ヘビー級ベルトなど、全く同じデザインで、各階級ごとに計6本あった(へビー、ミドル、ライトヘビー、ウェルター、ライト、ジュニア)。これに疑義を呈された時のロビンソンの一声は、「あ、帯の部分は長短があったよ。皆、ウェストが違うからね」。いや、そういうことではなくてと関係者が問うと、返答はふるっていた。「えぇ?だって、日本の横綱が付けてるマワシも、皆、同じように見えるけど?」これはわかり易過ぎる例と思うが、いずれにせよ、オールドファンなら、「このベルト、前にも似たの、見たな」と思った経験はあることと思う。日本の例で言えば、今でも全日本プロレスの三冠ヘビー級ベルトの内訳に名を連ねるPWFヘビー級王座は、最初から同じものが2本あった。そして、うち1本をジャイアント馬場が、旧知かつ、アメリカを本拠にするドリー・ファンクJr.に渡した。同ベルトは純金が使われており、いわば高価な宝石を持ち歩くようなもの。みだりに外に出すものでもない。なので、アメリカで防衛戦をおこなう時には日本からは持参せず、ドリーにこれを持ってきてもらい、その上で試合をおこなうという算段だった。

 ところがある時、思いがけぬ事態が。なんと、アメリカはフロリダ州で、ある新人選手が、PWFのベルトを巻いていたのである!ドリーが、馬場の意図を汲まず、自分が管理していいのだと勘違い。知己のプロモーションにベルトを貸し出したのであった。馬場が即座にドリーに国際電話をかけ、ベルトは元のさやに戻ったが、「(馬場の怒りも含め、)おおごとになる寸前でしたね~」とは、この時、まさに馬場にこの情報を教えた『週刊ゴング』編集人・竹内宏介さんの述懐である。

 総じて言うと、海外の方が、ベルトの管理は杜撰。もっと言えば、意識が薄いのかも。その延長戦上に、今回のオスプレイの件があるというわけではないと思いたいが。さりとて、日本は日本で、やはり同一ベルトを巡るいざこざが頻発。こちらは逆に、ベルトを神聖視すするが故の騒動が多かった。

タイトルの絶対視ゆえ、おこるトラブル。


 有名なのが、NWAインタージュニア王座問題。新日本プロレスのこの王座を保持していたチャボ・ゲレロ(=チャボ・ゲレロ・シニア。エディ・ゲレロの長兄)が、王者のまま、全日本プロレスに移籍。同団体でジュニアヘビー時代の大仁田厚などとベルトを賭けた激闘を繰り広げていたが、1982年5月に、新日本プロレスで、初代タイガーマスクが、NWA世界ジュニアヘビー級王者、レス・ソントンに勝利し、同王座を奪取。日本を主戦場に、NWAインタージュニア王座(全日本)と、NWA世界ジュニア王座(新日本)が存在することになった。悪いことに、全日本側からは、「今度は全日本プロレスが、NWAのジュニア系王座を管轄するよう、NWAから許可された」という情報が流され、新日本もこれに応戦。「NWAのインタージュニアは、全日本が管理する、1ローカル王座に過ぎない」とした。ざっくりと説明すると、管轄するNWAの内部で派閥が出來ており、それぞれが認定していたという感じであったのだが、日本のプロレス界ならではの、タイトルへの絶対視がいやがおうにも感じられる出来事であった。

 1982年から藤波が保持したWWFインターナショナルヘビー級選手権という王座も、同時期に2つ存在したことが。1984年3月26日、なんとニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで、前田日明がピエール・ラファエルを相手に、この王座を奪取。なぜこんなことが起こったのかとよく見れば、前田の方のベルトには、WWFよりよほど大きく、『UWF』の文字が。伝説の団体とされるUWFは、この翌月に日本で旗揚げ。同団体の最高顧問で、WWFにも顔が利く新間寿が、前田に一種の箔を付けさせるために、仕組んだのだった。当然、WWFの認可はなかったが、新間による、「こちらが本気になれば、WWFの本拠地で新たなベルトを作ることなど容易い」というアジテーションだった。もちろんUWFの告知も兼ねていた。新日本にすれば良いとばっちりだが、それだけベルトというものに、権勢も含めた価値があることの証左でもあろう。

 そして今世紀に入って有名なのが、IWGPヘビー級王座。3代目デザインのそれと、2代目デザインのそれの争い。何度か当欄でも書いてきたので、簡略化させてもらうが、2005年10月に新日本プロレスに初参戦したブロック・レスナーが3代目デザインのIWGPヘビー級王座を奪取。ところが翌年7月の防衛戦をレスナーがドタキャン。ベルトが持ち逃げされることとなり、新日本プロレスは、やむなくデザインとして2代目のIWGPヘビー級ベルトを復活させ、使用。レスナーはその後、アントニオ猪木率いるIGFの旗揚げ戦でこの3代目デザイン王座を賭け、カート・アングルに惜敗。アングルはその王座を持って、2008年より、新日本に参戦。2月に、正規の(2代目デザインの)IWGP王者だった中邑が、挑戦者として名乗りを挙げたアングルを迎撃。つまり、実質的に、デザイン面で3代目と2代目のIWGP級ベルトの統一戦となり、中邑が勝利。いわば、統一に成功したのだった。

 ただ、この一戦が、従来おこなわれるダブルタイトルマッチでの統一戦のように盛り上がったかと言えば、疑問に思う。もともとは同じ王座であり、それが他団体に行っていたことでの流れであり、どちらかというと、ファン不在な部分は否めかったように思う。そもそも新日本側は迷惑をこうむったわけなので、そこまでこちらが期待することが間違いなのだが。そういう意味でも、ファン不在の出来事であった。

鷹木を暫定王者扱いのオスプレイ


 IWGP世界王座を返上したオスプレイは、鷹木がそれを奪取した際、こんな呟きをTwitterに残していた。『Enjoy the Interim Championship』(暫定王者を楽しめよ)。リマッチの権利は当然あるし、その一戦には期待も注目もかかる。

 だが、ベルト争い云々より、私見では、先にすべきことがあるように思う。それは、オスプレイの返上当時も当欄に書いたが、そもそもの詳細な説明である。あの時、オスプレイは負傷による返上で、しかも全治は不明とされた。それが、約4カ月後の9月には復帰戦が組まれている。何でもかんでも全て開示する必要などないが、オスプレイが自作のIWGP世界ベルトをかざして、意外と早く戻ってきたことへの戸惑いは、このベルト問題より先に、ファン側には少なからず、あるのではないだろうか。

 オスプレイの選手としての素晴らしさは誰もが知るところ。そして、王者・鷹木は王座の価値を上げようと、日々、頑張っている。その2人の良さがケレン味なくリング上でぶつかり合う展開に期待したい。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

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