2021/6/4 17:45

引退を救った、あの現・新日本選手!現IWGPジュニア王者もリスペクト!いよいよ公開!葛西純ドキュメンタリー映画『狂猿』の見どころ!

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5月28日(金)より公開!


 天龍源一郎が大画面テレビを買ったのは、1987年ごろのことだったという。地上波デジタル放送への完全移行が2011年だから、それに付随した大型テレビブームが起きる、20年以上前のことだった。買い換えてからの天龍の談話が、いかにも本人らしい。「やっぱり大きな画面でプロレスを見ると、迫力が違うな。みんなの試合を観てたら、『俺もこうしちゃおれん』と、結局、道場に行って、練習しちゃったよ(笑)」

 そんな迫力が、文字通りスクリーンサイズで、しかもデスマッチで味わえる時が来た。葛西純主演のドキュメンタリー映画『狂宴』が、5月28日(金)より、全国の映画館で順次公開されるのだ。東京の公開館の一つであるシネマート新宿では、パンフレットやポスターの通常グッズの他に、お馴染み『カミソリボード』を、1カミソリごとに小分けした、『狂猿 オマージュカミソリボード』を、ひとつ200円で販売!表面はカバーで保護されており、傷つく危険はないが、早くも危なく盛り上がってる感がある。

 筆者も年明け発売の葛西の自伝に多少なりとも協力させてもらった縁で、先んじて拝見させて頂いた同作。今週の当欄は、この『狂猿』の見どころをご紹介!(該当の後半部分より、ネタバレ表記あり)。併せて、葛西純の人となりについても照射したい。

初のテレビ観戦が、あの有名デスマッチ!


 希代のデスマッチファイター、葛西純は、1974年9月9日、北海道帯広市生まれ。初めてテレビで観たプロレスが、3歳半時のアントニオ猪木vs上田馬之助のネイルデスマッチ(1978年2月8日)だったというから筋金入り。もっとも、リング下に敷き詰められた釘板に落下しなかった同試合。葛西は子供心ながらに、(これの何が面白いのか?)と思っていたという。後年、素足での画鋲デスマッチ等もこなす葛西らしい見解と言えなくもない?

 小学1年生時に、熱烈なプロレスファンの学友が出来たことで、本格的にファンに。初の生観戦は、1981年12月11日の全日本プロレス・帯広市総合体育館大会。中でも、“キングコング”、ブルーザー・ブロディの迫力にしてやられたとか。同系統と言っていい“狂猿“の異名を持つ葛西だが、こちらは単に、格闘技専門チャンネルに生出演した際、同日の出演者が大量のバナナの差し入れをもらい、葛西もそのお裾分けを頂戴。その量が余りにも多く、「これ、食べながら出演したら、ウケるだろうなあ」と思い、実行したことがきっかけとか。しかし、ブロディらが醸し出す、規制外の迫力の魅力が葛西のプロレスラーへの夢に繋がったのは言うまでもない。

 プロレスラーを目指して上京し、紆余曲折ありながら、1998年8月、大日本プロレスでデビュー。直接の先輩には本間朋晃がいた。本間が稽古をつけていたため、師弟と言っても言い過ぎではない。その本間に救われたことも。1998年11月の北海道巡業中、大雪に見舞われ、ノーマルタイヤで宣伝カーを運転していた葛西もハンドルを取られ、スリップ。ガードレールに激突し、しかも後続車両がそこに突っ込み、宣伝カーは大破。大日本・グレート小鹿社長(当時)は、当然激怒。葛西は責任を取って辞めようとしたが、車に同乗もしていた本間は、「んなもん、ノーマルタイヤで走らせる会社が悪いんだろうが。お前はこんなことでプロレスラー、絶対に諦めんじゃねえぞ」とあっさりと葛西の申し出をシャットアウト。葛西がプロレスを辞めようと思ったのは、本人が言うにはこの事故の時だけであり、「(本間さん)本人は覚えてないだろうけど……」と繰り返す、その大恩を感じさせる出来事となっている。

メジャーも巻き込むデスマッチファイターに!


 デスマッチデビューは、1999年10月。もともとデスマッチ志向が強く、理由が、子供の頃、一緒にプロレス中継を観ていた父親が、批評的なプロレスファンだったことに起因するのは知られる話だ。「今の技は、効いてないな」「今のは、当たってないな」etc……。子供心ながらに、(プロレスラーをやるなら、親父に文句をつけさせない、痛みの伝わるものでないと!)と思ったという。それゆえ、大日本プロレス入団前は、UWF系から分派し、当たりの激しい“バチバチファイト”で知られたバトラーツへの入門志望書も出している。それが理由でもないだろうが、K-1のリングで(2代目)グレート草津vs松永光弘(当時、大日本プロレスが主戦場)がおこなわれた際は、葛西もセコンドに(2000年3月19日)。完敗した松永が、なぜかセコンドの葛西に怒りをぶつけ、そこから互いがファイヤーデスマッチで争うという因縁も(2000年5月3日)。ただ、実は松永自体が大変、葛西を気に入っており、その引き立てという部分もあったようだ。

 以降、葛西はデスマッチファイターとしてブレイク。伝説とされるプロレス大賞ベストバウト受賞の伊東竜二戦(2009年11月20日)はもとより、2011年2月12日のバラモン兄弟戦(パートナーは沼澤邪鬼)は、『キン肉マン』作者の嶋田隆司(ゆでたまご)氏が絶賛する試合に。ノーキャンバスマッチだった同一戦だが、バラモンがリング中央に穴を開け、葛西が落下し、閉じ込められるも、パートナーの沼澤を救うためにそこから復活するという流れは、確かに『キン肉マン』顔負けの展開だった。

 2017年には、雑誌『Number』の『プロレス総選挙』投票にて10位にランクイン。新日本系、及びWWE系(中邑)を除いては、他、黒潮イケメン二郎とHARASHIMAしかベスト10入りしておらず、まさにデスマッチ界の顔ともなった葛西。とはいえ、実はメジャー戦士たちともふんだんに試合しており、“クレイジー坊主”、飯塚高史とは2回に渡りシングルで対戦。没収試合、無効試合と、決着はつかなかったが、互いに竹串を刺し合うなど、新日本のリングでは到底見られない清算な展開に(※大会はいずれも『タカタイチマニア』)。葛西自身は、「ノコギリボートとか見ても、一切、ひるんでなかった」と、その飯塚の肝の座りっぷりを絶賛していた。

 現IWGPジュニア王者のエル・デスペラードとは、これまた『タカタイチマニア』で一騎打ち(2018年5月7日)。没収試合だったが、葛西のナックルでデスペラードが顎を骨折。出場予定だった『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア』を棒に振り、病院には葛西も見舞いに駆け付けたとか。とはいえ、デスペラードは同試合の入場時に、有刺鉄線を巻いた長机の破片を持参。インディ、そしてデスマッチの雄に対するそこはかとないリスペクトが見えた。事実、怪我をさせたことを詫びる葛西のLINEには、『俺は葛西純とやれたことに誇りを持ってるし、普段得ることのできない刺激を得られたから、欠場することくらい、どうってことないですよ』と返って来たという。

 なお、デスマッチファイターとして開眼した葛西が帰省し、その、ワニのようになった傷だらけの背中を観た父親が発したのは、「もう、わかったから、帰ってこい」の一言だったという。葛西は、「『あっ、俺は勝ったんだな』と」と、ひとつの宿願を果たした、ある意味、凄絶な喜びを述懐している。

鑑賞に当たっての注意をラストに(※以下、部分的に『狂猿』のネタバレを含みます)


 さて、今回の『狂猿』の見どころである。極度にネタバレを警戒される方は、ここから先はご高覧されないことをお勧めしたい。

 まず、本欄の冒頭宜しく、デスマッチの迫力が凄い。特に最後は、ある1試合を大部分収録しており、これを大画面で観られるだけで、ちょっと得難い経験になると思う。また、デビュー当時の試合など、貴重な映像も頻出。こちらも見どころだ。

 関係者向け試写は4回おこなわれたのだが、筆者が行った際、前後左右に座ったのが全てプロレスラーだったのは、内心、可笑しかった。見ればその先にもレスラー、レスラー、レスラー……。こういった文脈で語られることは少ないかもだが、葛西が如何に仲間たちに愛されてきたかがよく分かった。そんな交友を示すかのように、葛西の仲間たちも同映画にはインタビュー対象として多数出演。某後輩レスラーとの酒席の映像もあるのだが、「大日本プロレスで、塩対応だった先輩は?」との葛西の問いに、あっさりと名前を出しているところにも注目(?)。また、前出の本間も出てくるが、とりあえず聞き取り辛い(苦笑)。若干の笑いが試写会場からも起こっていたことを付記しておく。また、同映画出演直後に亡くなったのが、ダニー・ハボック(2020年5月31月逝去)。その生前の姿を観るとともに、心の中で手を合わせたい。

 映画は主に、試合と本人、及び関係者へのインタビュー、プラス、葛西のプライベート映像で構成される。プライベートでは住居やその最寄り駅を惜しげなく開示。夫人や子供はおろか、果ては実家及び、母親も登場。息子としての葛西純について語る姿は必見だ。

 そして、唐突にホームセンターの模様が映ったかと思うと、そこにはデスマッチアイテムを買い出しに来た葛西の姿。果たして何を買い、どう作るのか。まさに舞台裏を観られる体(てい)で、コアなマニアも楽しめること請け合いだ。

 天龍、安川惡斗など、プロレスラーが主役のドキュンタリー映画自体は、あるにはあるが、まだ少なく、もちろん日本のデスマッチファイターとしては葛西が最初のそれとなる。DVDでなく、大画面で観るべき一作と、太鼓判を押したい。

 最後に、不詳・筆者から、鑑賞に向けての注意をさせて頂ければ幸いだ。
「焼肉を食べるなら、同映画鑑賞前に」

 その訳は、スクリーンでお確かめ下さい。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

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