2020/2/16 10:18

本人を模したマスクマンも!親子2代で受けたあのレスラーのあの技!追悼・野村克也とプロレス

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本人を模したマスクマンも!親子2代で受けたあのレスラーのあの技!追悼・野村克也とプロレス
5.0

『ID野球』は、『Important Data野球』の略だが……。


『カツヤ・ID・ノムラ』というレスラーがいたのをご存知だろうか。登場したのは2009年3月15日、ZERO1の後楽園ホール大会。マスクマンだったのだが、対戦相手はこれがプロ2戦目となる高野忍。前歴は元読売巨人軍出身のプロ野球選手であり、そのネーミングに、さもありなんと思ったものだ。なお、IDは、『インターナショナル・データベース』の略で、高野の巨人軍時代の情報を網羅しているとのことだった。中身が外国人選手らしく、それらしい色付けだった。

 衝撃的な訃報が入った。2月11日、元プロ野球選手、及び監督として名を馳せた野村克也さんが亡くなられたのだ。手前味噌になるのを承知で書かせて頂くが、実は昨年7月から8月にかけて、3回インタビューさせて頂いていた。そちらの書籍は来月下旬に発売予定だが、その半年前のご様子は、お元気そのもの。一応、インタビュースペースである、某ホテルのカフェに、車椅子姿でご登場されたのだが、レジェンドを目の前にして緊張する筆者と編集者を見て取ったのだろう(もちろんその時が筆者や編集者とは初対面)。こう言って空気を弛緩させて下さったのを覚えている。「元プロ野球選手とは思えない登場の仕方でしょ?(笑)」余り個人的な感懐を書くのもなんだが、インタビュー中も、とにかくサービス精神旺盛で、心根の良い方だという思い出だけが残っている。

 今回の当欄は、故人を偲び、「野村克也とプロレス」というテーマでお送りしたい。

馬場との対戦経験はなかったが……(プロ野球時代)


 プロ野球選手とプロレスラーという関係性で言えば、その例証は枚挙に暇がない。言うまでもなく、ジャイアント馬場は元巨人軍の投手だったし、力道山は、中日ドラゴンズの強打者、森徹と合同練習する昵懇の間柄であった。アブドーラ・ザ・ブッチャーは、元阪神選手及び監督の岡田彰布と、そのルーキー時代に会食を通して出会い、以来、友人関係。元巨人軍の助っ人外国人、クライド・ライト(1976~78年)は、なんと日本でアンドレ・ザ・ジャイアントと食事をする仲だった。というのも、アンドレが日本に持っていた同じマンションに、ライトもたまたま住んでいたのである。

 とはいえ、では野村さんがプロレスが特に大好きだったり、プロレスに詳しかったりするかと言えば、そういう事実は一切ない。1回目の取材中も、筆者の名刺にある『プロレス&格闘技ライター』という表記を、不思議そうに眺めていた。とはいえ、内幕話になってしまうが、野村さんのインタビュー取材は、書籍の場合、『2時間×3回』が基本路線であり、その時間内で、本筋と外れるプロレスの話題を、筆者もとても振る余裕はなかった。そして、例えば、前出もしたジャイアント馬場が亡くなられた際(1999年1月)には、あにはからんや、こんなコメントを残している。「同世代ですが(※野村さんが2つ上)、個人的な付き合いはないです」しかし、この後、こう続くのである。「でも、飛行機やホテルで会ったら、必ず声をかけて来てくれて、挨拶してもらってたよ」

 そう、野村さんは、その偉大な実績や知名度から、プロレス、及び格闘技界との知己が自然と生じていたのである。

意外にも、リングサイド生観戦多し。


 2000年11月には、神取忍と隣席。こちらは両者、全日本テコンドー選手権のゲストとしての登場。2005年6月には、亀田興毅vsサマン・ソーチャトロンを招待でリングサイド観戦。亀田の圧勝劇に、「強い。お父さんのスパルタの効果だね。あの練習内容と比べたら、野球なんて生ぬるいよ」と強烈な一言。事実、楽天監督3年目の2月12日には、チーム内の紅白戦で、両軍合わせ13四球かつ20失点の惨状に大激怒。「理論は捨てた。……気合いだ!アニマル浜口さんに、臨時コーチになって貰うおうか?」と提言している。因みに、総合格闘技『PRIDE』のリングサイドにも、よく野村沙知代夫人と連れ立って来ていた。

 ところで、昨今のニュースを見て、驚いた方も多いのではないか?中邑真輔自身がTwitterで明かした、野村さんとの関係である。実は京都・峰山高校の先輩と後輩の間柄。野村さんからは、故郷について、こう聞いていた。「集落みたいなもんで。海岸沿いに家が5、6軒ある程度。『ここでこのまま人生を過ごすのか』と思うと、いたたまれなかった」。時代的なこともあるのかと思いきや、実際、数年前、テレビに映されたその野村さんの故郷の風景を見ると、確かに荒涼とした雰囲気。実家が近いという意味でないとは言え、同じく幼少期の話を聞いたことのある中邑と、まさか同地域の生誕とは思わなかった。こちらが明らかになるきっかけは、2002年、宴席でのことだった。事前に、峰山高校出身と紹介されていた中邑に、野村さんが声をかけて来たのだという。「峰山出身だなんてアナウンスを聞いてビックリしたよ。後輩だね」。この場こそ、同年12月31日の『INOKI BOM-BA-YE』開催後のパーティーの場。実は野村さんは、猪木とは少なからず交流する仲だったのだ。

猪木との意外な交流


 寡聞にして、そのきっかけはわからないが、猪木が最初に仲良くなったのが、夫人の沙知代さんの方であることは間違いない。沙知代さんが脱税で逮捕され、釈放された翌月には、一緒に食事をしたことを猪木自らが明かしており、2001年大晦日の『INOKI BOM-BA-YE』に野村夫妻を招待する旨を、開催直前に公言。「時間がないので、電話連絡しました」と言っていたから、既にこの時点で、浅くない交友だったと思われる。結局、当日、野村夫妻は来なかったが、なんと、実子の野村カツノリが来場。実はカツノリは大の猪木ファンで、携帯の着信ボイスを猪木のそれにしていたほどであり、夫妻が席を譲渡した可能性があろう。

 翌年6月には、『新宿ロフトプラスワン』で沙知代さんが夫同伴でトークショー。すると、なんとここに猪木が現れたのである。同会場は100人も入れば満杯というキャパシティであり、しかも、中2階のようなところにある控室は、手狭そのもの。そこにやって来るわけだから、猪木と夫妻の親密ぶりもうかがわれる。先に挙げたPRIDE会場での夫妻の観戦も、猪木の便宜によるものだろう。毎年2月におこなわれる、猪木の誕生日パーティーに、夫婦連れ立って登場することも。そういえば、件の中邑と会った『NOKI BOM-BA-YE』(2002年)では、実際、沙知代さんが、リング上で猪木から闘魂ビンタを食らっている。

 そして、2005年2月、楽天の宮崎キャンプでは、猪木がさながら闘魂注入宜しく訪問。同球団の監督が野村さんになるのは翌年からだが、この時、捕手として現役だったのがカツノリ。ファンならではの願望でもある、猪木からのビンタの受け手を志願。猪木も、プロスポーツ選手相手ということで、タガが外れたのか、親指の先端をヒット。思わず「ちょっと痛かった?」とカツノリに聞いていたが、カツノリは大感激していた。いずれにせよ、野村家は、親子2代に渡り、闘魂ビンタを食らったことになる。

 ただ、前掲の沙知代夫人の際は、直後に沙知代夫人が猪木にビンタをかましている。つまり、張り返したわけだ。もちろん、こんなことをするタレントは他にはいない。野村さんの、「ウチも犬を飼っておってなあ。何匹も飼ったけど、一番怖いのはサッチーという名の猛犬だったわ」という言葉が思い出される。

健介&北斗に負けぬ、名タッグ


 2010年11月には、なんと、佐々木健介&北斗晶夫妻と一緒に登壇。沙知代夫人とともに、理想のカップルを選ぶ、『パートナー・オブ・ザ・イヤー』(『「いい夫婦の日」をすすめる会』主催)に選ばれたのだった。なお、2組選出されるのは、同賞で初のことだった。ここで健介が、夫婦円満の秘訣を、「辛抱、忍耐です」と言うと、野村さんはそれを受け、「(秘訣は)かかあ天下。女性上位の国は栄える」と持論を炸裂。ともに妻の強さが際立つ会見になっていた。

 沙知代さんの政界進出について聞いた時のことだ。以下のようなやり取りがあった。

「小沢一郎さんが家に来てね。私に出馬を打診したんだけど、『私はそういうのはちょっと……』と言ったら、隣にいた女房が、『なら、私が出る!』って言うんだもん。そういう問題じゃないと思うんだけど……」

「あはは」と笑った筆者に、野村さんは言った。「ね、おもろい夫婦でしょ?(笑)」

 2009年、夫妻はアニメ映画『カールじいさんの空飛ぶ家』のプレミア試写会に出席。野村さんが壇上で、沙知代さんに宛てた手紙を朗読するシーンがあった。

「いつも同志と思っています。あなたは怖い人だと思われてるけど、本当は違う。優しすぎるんだ。すぐ人を助け、お金を貸し、ウチには借用書ばっかり。ちゃんと返してもらったのか?私は死ぬまで働きますから、最後まで一緒にいてちょうだいね」。

 前述の『パートナー・オブ・ザ・イヤー』授賞式の終盤、撮影陣の要望で、キスのショットを撮ることになった。健介が、これ以上なく恥ずかしそうに、頬に申し訳なさそうにチュッと触れたのに対し、野村さんは沙知代さんの顎を持ち、一切の照れなく、頬に強く接吻。愛というか、好きという気持ちの強さを感じた。筆者が取材中、感じたのも、亡き妻が愛おしくてたまらないといった胸中だった。

 天国で再会してるだろうか。改めて合掌したい。

この記事を書いたライター: 瑞 佐富郎

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