2019/4/17 12:56

新形態の実録漫画!『新日学園 内藤哲也物語』【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】

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新形態の実録漫画!『新日学園 内藤哲也物語』【多重ロマンチック的ぼくらのプロレス】
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これは実在プロレス漫画の新しい表現スタイルだ!

KADOKAWAから2019年3月28日に『新日学園 内藤哲也物語』第1巻(作画:広く。)が発売された。これは新日本プロレス所属のプロレスラー・内藤哲也をモデルにした同名主人公、内藤哲也を軸にした学園プロレス漫画だ。

プロレスの実在選手をディフォルメして漫画の主人公にする。過去には名作もたくさんあるが、大きく2種類に分けることができる。ひとつはフィクションを交えながらも実際の話を軸に構成する“伝記スタイル”。古くは『ジャイアント台風』(1968年、原作:高森朝雄名義、作画:辻なおき)、『プロレススーパースター列伝』(1980年、梶原一騎 作画:原田久仁信)が有名。近年では力道山と戦った木村政彦の物語『KIMURA』(2013年、原作:増田俊也原作、作画:原田久仁信)がそうで、実在のプロレスラーの生き様をなぞる分、ダイレクトに頭に入ってきやすい。ただしその分プロレスファン以外はとっつきにくい面もあるだろう。

もうひとつが“実在選手をモデルにしながらも意図的に誇張や置き換えをし、設定を膨らます”スタイルだ。日本連合軍vs全米という架空の夢対決を描いた『プロレススターウォーズ』(1984年、原康史、みのもけんじ)にはじまり、2頭身キャラのギャグ漫画『すとろんぐすたいる』(2013年、作画:18号)、学園物の『しんにち!』(2015年、作画:まつもと剛志)。うんことちんこの『ど~んとドラゴン・キッドくん』(2001年、作画:松下幸志)、『スープレックス山田くん』(1985年、監修:古館伊知郎、原作:篠沢純太、作画: 国友やすゆき)もまあ、こちらのスタイルか。こちらは頭に入ってきやすいぶん、弱点は実際のレスラーとのかい離があるということ。ドラゴンキッドはちんこを出さないし、スタン・ハンセンは国技館の天井に突き飛ばされない。

この伝記スタイルと置き換え誇張スタイルをうまくフィージョンさせた新形態の実録漫画が『新日学園 内藤哲也物語』。新日本プロレスで起こった試合やプロレスラーの発言、関係性を、郊外の男子校「新日学園」で起こった話として置き換え、再構成するというなんとも手間のかかるリアルと架空を重ねた手法で描き切っているのだ。内藤哲也は「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」メンバーだし、みんなとファミレスで会議するし、棚橋にあこがれて同じ高校に入るけれど、そこはプロレスじゃなくてプロレス部のリング。あとから出てきた同じ時間を過ごしたオカダに追い抜かれ、大きく嫉妬を抱くのも史実と同じストーリー。いっぽうでベテラン選手は先生などの設定でコメディリリーフを担い学園漫画としても完成されている。リング上のバトルは学生服だ。プロレスファン以外が呼んでもバトル漫画として面白いし、すっと実在レスラーのことが勉強になるという、ありそうでなかったスタイルの漫画なのだ。

もちろんこのスタイルにも弱点はある。現実をベースにするが故に、どうしても現実のスピードに追い付かないという点だ。とはいえ『ドカベンプロ野球編』のようにむりくり現実のスピードに合わせて未来予想しているわけではなく、じっくり丁寧に”その時代”をおさらいしている。「鷹木信悟」の新日学園入りはまだまだ先になろうだろうが、第1巻時点で伏線の張られている「柴田vs後藤」、「隣町の真田くんの物語」もしっかりこの設定の上で読んでみたい内容だ。

書籍化にあたり同人誌や新日本プロレス公認の電子書籍として出されていた『HIGHER AND HIGHTHER!“運命”の10月10日』(2011年)も収録。連載に当たり設定が変更されているが、どのあたりが変更されているのかを比べて読むのも面白いだろう。2019年には週刊プロレスで棚橋弘至を主人公において実録系漫画の源流ともいえる『プロレススーパースター列伝』が復活中。プロレスファンが増えているという昨今だからこそ、手軽に歴史が振り返られる実在プロレス漫画がいま熱い!

この記事を書いたライター: 漁師JJ

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