2019/1/9 9:17

汚れる前のストロングスタイルへの回帰。棚橋が守ったものとケニーの凄さ

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汚れる前のストロングスタイルへの回帰。棚橋が守ったものとケニーの凄さ
3.7
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2019年1.4東京ドーム大会のメインイベントで、約半年間に及ぶ棚橋弘至とケニー・オメガによるイデオロギー闘争に決着がついた。

ここまで全面にお互いのプロレス感をぶつけ合ったのは、2009年に棚橋弘至がアントニオ猪木にこだわり続ける中邑真輔に対して「ストロングスタイルは呪い」と発して以来ではないだろうか。

棚橋弘至本人も言っていた通り、当時の新日本プロレスにはストロングスタイルの残り香があり、中邑真輔が新日本プロレスを守る側。棚橋弘至が革命を推し進める側であった。
暗黒時代から抜け出したばかりの新日本プロレスにとって、ストロングスタイルとはアントニオ猪木が押し付けたなんちゃって格闘技のスタイルを強制されるものであり、アントニオ猪木の立場を良くするためにはロクなトレーニングもできずMMAに駆り出されるようなもの。
結果としては棚橋弘至が勝利し、新日本プロレスは棚橋弘至の色に染まっていくことになる。これはアントニオ猪木信者にとっては新日本プロレスが破壊されたと同義であり、後に旗揚げされるIGFに移っていく原因にもなったであろう。

そして今回は棚橋弘至が暗黒時代から抜け出した後の“ブシロード”新日本プロレスを守る立場となり、ケニー・オメガは自身がベストだと信じる身体能力を全面に押し出したアスリートプロレスに新日本プロレスを変えようとしていた。
新日本プロレス以上にストーリー性のあるDDTから日本のプロレスに入ってきたケニー・オメガが、アスリートプロレスに活路を見出したのも面白いポイントであった。

ここ数年怪我に苦しんだ棚橋弘至とは対照的に、ケニー・オメガは新日本プロレスの海外進出の切り札として扱われ、発言権と影響力を強めていったのだろう。
BULLET CLUB1回目の分裂、ゴールデンラヴァーズの再結成、オカダ・カズチカとの三本勝負、BULLET CLUB2回目の分裂、IWGPヘビー級選手権試合での3wayマッチと、ケニー・オメガが主役となる回数は増えた。

だが、筆者はケニー・オメガの描くプロレスにいまひとつ乗れない状態が続いた。BULLET CLUB2回目の分裂時もBULLET CLUB OGを支持した。ヒールという立場を捨てて自身の立ち位置を曖昧にしてしまったケニー・オメガより、本来のBULLET CLUBのあり方を実践しようとしたタマ・トンガの方が魅力的だったのだ。

ケニー・オメガが標榜したアスリートプロレスは自身の身体能力の高さを武器に、互いの身体能力を競い合い、タフネスを競い合う。生死を賭けているのではないかと思わせるほどにハイスパートなプロレスであった。
それは飯伏幸太、Codyとの3wayマッチで極まった。
しかし、そこには何かが欠けていた。魂のぶつかり合いが見えない。人生のぶつけ合いが見えない。

「これは戦いではない」

皮肉なことに、筆者が嫌いになる前の、MMAに金の匂いを嗅ぎつける前のアントニオ猪木が標榜した、プロレスとしてのストロングスタイルが無かったのだ。

棚橋弘至はそこを突いた。
「ここは新日本だから」
その一言が答えだった。

さらに棚橋弘至の言う「プロレスは残酷なものであってはならない」という言葉は「プロレスを見て死の危険を感じさせてはならない」ということではないか。
棚橋弘至の、プロレスは幸せなものでなければならないという確固たる意志があった。

確かにケニー・オメガのスタイルは刺激的だが、人間は刺激に慣れていく生き物である。
1990年代、全日本プロレスでは受け身のとれない垂直落下式の技とカウント2.9の攻防が人気を博した四天王プロレスがあった。
四天王プロレスはどんどん過激になっていき、NOAH設立後は試合中に選手が、場外へのブレーンバスターで吐血することもあった。
つまりケニー・オメガの標榜するアスリートプロレスの終着点は四天王プロレスではなかったか。

だが、ケニー・オメガにも譲れない意地があった。信じた道があった。棚橋弘至との舌戦で、棚橋弘至が自身のスタイルについてこられない老兵であると切って捨てて見せた。
だから時代を逆戻りさせたいのだろうと。自分が活躍できるスタイルのままにしたいのだろうと。これまでの新日本プロレスのスタイルにも、アスリートプロレスにも順応できるケニー・オメガだからこその主張。
肉体的な衰えは棚橋弘至もわかっていることであるが、ケニー・オメガは残酷な現実を突きつける。

それでも棚橋弘至は揺るがなかった。
試合中もいつも以上にスローペースで戦い、ケニー・オメガのペースに付き合わない。勝つためのパーツを一つ一つ丁寧に積み上げていく。
対するケニー・オメガも自身の身体能力と経験を武器に棚橋弘至を追い詰めていく。膝を削られて機動力を削がれても、ここぞというタイミングでスパートをかけてくる。
結果として、棚橋弘至はケニー・オメガにハイフライフローを決め3年11ヶ月ぶりにIWGPヘビー級王者となり、イデオロギー闘争は終結を迎えた。
棚橋弘至は試合後のマイクでケニー・オメガに一切触れることなく、ハッピーエンドで会場を締めた。久しく目にすることができなかった多幸感の中で、ケニー・オメガは燃え尽きてしまっていた。

棚橋弘至は太陽である。かつての中邑真輔がそうであったように、棚橋弘至とイデオロギー闘争を行うほど近づくと灰にされてしまう。
その後、中邑真輔はストロングスタイルというジャンルを吸収し自身のキャラクターとすることで灰の中から蘇った。

ケニー・オメガは噂されるWWEへの移籍を決断するのか。AEWという新団体で自身の理想を体現するのか。ベストバウトマシンというキャラクターを自身に吸収し新日本プロレスに上がり続けるのか。

どんな選択をしても、ケニー・オメガはAJスタイルズがWWEに移籍した後、外国人エースとして活躍し、新日本プロレスを支えてきたことは事実である。世界進出の旗主となったことも事実である。

素晴らしいプロレスラー、ケニー・オメガに敬意を評しつつ、この項を締めたいと思う。

この記事を書いたライター: シンタロー

コメント

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  • 二人のプロ意識がしっかり出た素晴らしい試合だったと思います。試合前試合中散りばめた伏線を回収できてましたし、アスリート性・魂のぶつかり・イデオロギー色々なものを飲み込んでいました。
    ケニーは離脱するようなので次はお預けですかね。
    飯伏幸太はどうするのかな?
    そしてエリートが去った枠に新しいスターが生まれることを楽しみにしてます。

    ID:9508836 [通報]
    (2019/1/9 10:18)
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  • 棚橋テーブルにハイフライフロー
    品が無い。

    ID:9622607 [通報]
    (2019/1/9 13:05)
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  • 中邑は棚橋がいる間は新日本のリーダーにはなれないと悟り、WWEに行くことで棚橋より価値を上げようとした。
    ケニーもIWGPを巻いて新日本のリーダーになったと思ったら、棚橋の政治力により、退団を選ぼうとしている。
    ケニーの退団をオカダ、内藤はどう思っているのか。
    それが聞きたい。

    ID:9627095 [通報]
    (2019/1/9 18:50)
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  • 中邑は別に新日本のリーダーになりたいと思ってないと思いますが。むしろ棚橋がいてくれるから自由にやれていたでしょ。

    ID:9508836 [通報]
    (2019/1/9 20:15)
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  • 中邑は自由にやるしかなかったから、逆にロックスターに変身できたんじゃないですかね。
    IWGPを巻いて新日本の主役になりたくないプロレスラーはいないと思います。

    ID:9627095 [通報]
    (2019/1/9 20:32)
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  • 30年前がどうとか、四天王がどうとか知らねえよ、ケニーは「ケニー」だろうが
    だからローリングストーンのインタビューで「ファミコン世代の老害」とケニーが言ったんだろ、棚橋と古臭い、何十年前の話してる年寄りに

    ID:9650369 [通報]
    (2019/1/11 0:06)
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  • ケニーは新日本の舞台だからこそベストバウトマシーンとなり得た。仮にケニーの対戦相手がAEWのメンバーでベストバウトとなりうるのか?コーディ、ペイジは凄いが、所詮BTEの繋がりがあるので、結局闘いにならない気がする。
    つまり、ケニーにとっては新日本が一番!

    ID:9659090 [通報]
    (2019/1/11 16:55)
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  • 四天王プロレスとWWEを否定した先にあるのは中途半端さだけだよw
    エンタメショーにもなれず、スポーツショーにもなれない
    16年1.4のAJ中邑戦が新日の理想でしょ
    ストロングスタイルってけっきょくなんなの?
    そんな問いを繰り返す新日に新規ファンも飽きつつあるのが今だね
    イービルのギミックをライガーが否定していては未来ないよ

    ID:9634875 [通報]
    (2019/1/12 16:30)
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  • ケニーなら四天王プロレスのようなエグさやタフな試合も出来るでしょ。そしてアメリカウケする試合も出来ると思う。
    棚橋は両方とも出来ない。あとケニーって相手を光らす為に結構危ない技受ける。これは内藤もそうだけど。

    ID:9701396 [通報]
    (2019/1/14 0:50)
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  • ケニーは残るのか去るのかはっきりしろよ!
    海外に戻るならそう言えよ!
    いつまでも退団匂わすことだけ言ってモヤモヤして。

    ID:9750773 [通報]
    (2019/1/17 22:40)
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  • ホーガン、ブロディと新日本はエース外国人がピーク時に離脱した経験があったが、ケニーの場合は中邑が離脱したときに近いと感じる。
    日本人と変わらないんだよね。よりショック。

    ID:9627095 [通報]
    (2019/1/18 11:48)
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  • 去年のエリート劇場には辟易としたから、まあ、この流れで整理つくと良いが。ケニーはまたファンを宙ぶらりんにしてメロドラマに自己陶酔してるようだ。

    ID:9361291 [通報]
    (2019/1/19 12:36)
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  • 四天王がダメみたいな書いてあるけど、その時代、その裏には「K1プライドなどの格闘技の隆盛」「プロレスラーの格闘技惨敗」などがあって、格闘技にも負けないプロレス、プロレスの中でもプロレスの凄さを見せつけてやったのが四天王プロレスなんだよ。
    格闘技に惨敗して落ち込んでたプロレスファンに「やっぱりプロレス最高!プロレスのが凄い!」というのを改めて教えてくれたのが四天王プロレスだから。

    ケニーが凄いのとはまた違うものなんだよ。

    ID:9774964 [通報]
    (2019/1/20 2:45)
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  • 実際は猪木はアメプロスタイルで、ストロングスタイルみたいなのはマスコミが作り上げた偶像みたいなもんなんだよね。その後の格闘技路線も、格闘技が盛り上がってきたからのっかっただけで、基本は話題作りのエンターテイメント。まあ、影響受けてこんなふうに語って楽しむファンは多いから、ある意味夢を売る商売なんだなーとは思う。

    ID:9709428 [通報]
    (2019/1/27 9:16)
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  • 棚橋は好きだが、1.4では相手がケニーだったから面白くなったんであって、棚橋だけではもう辛い。動けないし。
    新日がケニーの後釜でジェイを推すのは判るが、もう少し古参の外国人を大事に使って欲しい。
    KESとかをもう少し上手く使えないもんかね…

    ID:9385134 [通報]
    (2019/1/27 23:13)
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