2018/5/8 17:51

新たな進化へ。棚橋弘至の時代は終わらない

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新たな進化へ。棚橋弘至の時代は終わらない
4.9

2018年5月4日、オカダ・カズチカvs棚橋弘至のIWGPヘビー級選手権は結果から言えばオカダ・カズチカの勝利で幕を閉じた。強すぎるとまで称される王者は棚橋弘至が保持してきた最多防衛記録11回を抜き、V12を達成。これから先の防衛ロードは読んで字の如く前人未到の領域に入っていく。

棚橋弘至としては実に2年4ヶ月ぶり。2016年1月4日の東京ドーム以来のIWGPヘビー級戦線への復帰であった。一度は「全てを託した」とすら話した棚橋弘至であったが、ケニー・オメガが参入して以降のIWGPヘビー級戦線には満足していなかったのではないか。ケニー・オメガが悪いのではない。ファンに求められるまま、試合は過激になり、フィニッシュホールド一発では決着がつかなくなった。試合のハイライトが、フィニッシュホールドをめぐる攻防から、カウント2.9を連続するマラソンマッチへと変化していった。だが、棚橋弘至はその流れに異を唱えることの出来る立ち位置にいなかった。2016年に盟友であったシンスケ・ナカムラが新日本プロレスを離脱。そのシンスケ・ナカムラのイメージが染み付いたIWGPインターコンチネンタル王座という宿題に、自ら立ち向かうことを決意した。

だが、新日本プロレスを復活に導き、IWGPヘビー級戦線で長年戦い続けた棚橋弘至の身体は一つの限界を迎えていた。左肩の剥離骨折、二頭筋断裂。欠場を余儀なくされ、IWGPインターコンチネンタル王座という宿題は宙ぶらりんの状態になった。2017年1月4日の東京ドーム大会でカードが組まれない可能性すら出てきた中で、当時同王座を保持していた内藤哲也に挑戦するも敗戦。ベルトの破壊行為に及んでいた内藤哲也に再度挑戦が決定するも、今度は右上腕腱遠位断裂。手術を避けた結果復帰は早まり王座を奪取してベルトを修復。ようやく白きベルトという宿題に決着をつけたが、切れた靭帯は筋肉に吸収されてしまい完治は望めない身体になる犠牲を払った。さらに2018年には右膝変形関節症により欠場。今回のIWGPヘビー級選手権が決定した後もオカダ・カズチカから欠場と復帰を繰り返している点を口撃されてしまう。それでもファンから欠場を責められることはなかった。逆に治療に専念するために長期間の離脱を願う声すらあった。

本来、プロレスラーは自身の身体の状態に合わせて試合のスタイルを変えていく。棚橋弘至と同じように膝を痛めていた武藤敬司は、30代後半で既にムーンサルトプレスを放つ頻度を減らし、足4の字固めというフィニッシュホールドに移行していた。大一番ではムーンサルトプレスを繰り出すこともあったが、奥の手としての意味合いを強めていったのだ。対して棚橋弘至は41歳。前哨戦で毎試合ハイフライフローを放つという行為自体が奇跡と言っていい。

そして、今回も棚橋弘至は自分を変えなかった。絶対王者と呼ばれるまでに進化したオカダ・カズチカを相手に、変わらない棚橋弘至なままぶつかっていった。試合序盤は笑みを見せていた王者が、どんどん追い詰められていく。試合の緩急、仕掛けるタイミング、一発の重みではまだ棚橋弘至に分があるのだ。二人の試合を見ている中で、筆者は懐かしいという感情を覚えていた。オカダ・カズチカvs棚橋弘至が数年ぶりに行われたからではない。その試合内容が棚橋弘至、オカダ・カズチカ、AJスタイルズという三強がベルトをめぐって争っていた頃の記憶がフラッシュバックしたのだ。カウント2.9を奪い合う攻防ではなく、たった一発のフィニッシュホールドをめぐる攻防。棚橋弘至が放った逆レインメーカーは本家に勝るとも劣らない一撃であった。

今回の試合で棚橋弘至が示したのはIWGPヘビー級戦線からの完全撤退ではなく、第一線に回帰する可能性であった。怪我による低迷から全盛期に近い動きを取り戻した。2014年から2016年にかけての自分を取り戻したのだ。だが、2018年のオカダ・カズチカはそれを上回っていた。棚橋弘至に過去の自分に並ぶというテーマがあったのだとしたら、それは達成した。次はオカダ・カズチカに勝利するための進化を見せるだけ。簡単な道のりではないだろう。V12を達成したオカダ・カズチカは新たな防衛ロードを築くため、ケニー・オメガとの時間無制限三本勝負という前人未到の領域に足を踏み入れることを決めた。オカダ・カズチカもまた、棚橋弘至の作り上げたIWGP王者像を超え、唯一無二の存在になろうとしている。それでも棚橋弘至が再びあのベルトを巻く姿を見られるのだと信じたい。棚橋弘至の言葉を信じたい。

「俺はIWGPを諦めない」

この記事を書いたライター: シンタロー

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